ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

【魔人族殲滅作戦】を実行したのは、言うまでもなくあのミカエルと言う男だ。

どうやらあいつは魔人族に並々ならぬ憎悪を抱いているようで、魔人族をこの世から消し去るために、魔人族と和平を結ぶと偽り、あの一族をみな殺しにした。
 
目覚めたばかりの頃にその話を聞かされた時、私は思わず絶対零度(ゼロアブソルート)の魔法を使ってミカエルを殺そうとした。

しかし目が覚めたばかりで、まだ魔力を上手くコントロール出来ていなかった時に、絶対零度の魔法を使ったんだ。

普通だったら即死だったところを、あいつはニコニコと微笑みながら私の魔法を跳ね返した。

「そんなに怒ることはないでしょう? そもそもこの件について君は何も関係がない。それだと言うのになぜそんなに怒るんだ?」

「なぜ怒るかだって!? そんなの決まっているだろう! 大切な仲間の一族を皆殺しにされたんだ! 怒らない方がどうかしている!!」
 
魔人族を皆殺しにしたって事は、おそらくリヴァイバルの妹のエレノアも……。

「ほぉ……大切な仲間ですか。私からしたら、なぜあんな王を仲間として呼べるのか疑問に思うところですね。あんな殺戮ばかりをして来た悪魔を、よく仲間と思えたものだ」

「な、んだとっ!!」
 
確かにエクレールと出会う前のリヴァイバルは、たくさんの人を傷つけては心臓をえぐり出し躊躇なく握り潰していた。

しかしそれは大切な家族と一族を守るために、仕方なくやっていた事だったんだ。

そもそも人間族が魔人族を我が物にしようと思わなければ、人が殺されたり憎しみや悲しみが生まれる事はなかったんだ。

「今の言葉を取り消せ! 誰が悪魔だ!? あいつは悪魔なんかじゃない! あいつはリヴァイバルと言う男だ。私たちが知っている、無口で無表情で絶対にエクレールの側から離れようとしなかった、誰よりも人間族を愛していた私たちの仲間だ!」
 
リヴァイバルは人を傷つける事の辛さを誰よりも知っている。

傷つけられて負う痛みも知っている。

だからこそあいつは、誰よりも人間族を愛していた人物だった。