ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

死んだ人間を生き返らせる方法があるとすれば、それはたった一つだけ。

それはリヴァイバルの血を使う事だけだ。

しかしあいつは魔人族だ。

過去にあいつの血を使って生き返った人間が居るって話しは聞いたことがない。

それどころか、魔人族の血が人間族の血に馴染む確率は一%にも満たない。

そんな望み薄の確率に掛けているってわけじゃないよな?

「さっき言っただろ? オフィーリアは死んだ直後のままで保存されているって」

「あ、ああ。しかしそれが何だって言うんだ?」
 
死んだ直後のまま保存されているから何だって言うんだ?

「オフィーリアは確かに……死んでいる。だが彼女は最後に一度だけ、息を吹き返したんだ」

「っ?!」
 
星の涙を貫かれたと言うのに、たった一瞬だけでも息を吹き返しただと?

「それは俺の右目から流れ落ちた涙によって、ほんのわずかに星の涙に光が戻ったからだ。だから彼女は最後に一度だけ息を吹き返した」
 
ブラッドは右目に包帯を巻き直していく。

「だから考えたんだ。オフィーリアを死んだ直後のまま保存する事で、まずは彼女の雫の代わりになる物を見つけてから、この右目の魔力を全て変わりになる雫に返す。そして新しく出来上がった雫を彼女の体に戻すことで、粉々になってしまった星の涙は元の形を取り戻そうとして、雫の魔力に反応する。そして新たに魔力を吸収し始めれば、星の涙は少しずつだけど元の形を取り戻していき、彼女もまた目を覚ますかもしれないと」

「……っ」
 
今この男が言っていることは、自分で考えて思いついたことなのか? 

確かにこの男の右目には星の涙の輝きが灯っている。

それはおそらくブラッドの右目にはトトの魔力以外にも、星の涙の魔力が宿っているからだろう。
 
しかし雫の代わりになる物がこの世に存在しているって言うのか?

「だから俺はこれを遂行するために、クラウンを倒した後に三百年生き続けるつもりだ」

「さ……三百年だと?!」

「三百年後に虹の花と言う、雫の代わりになる花がこの世界のどこかで一輪だけ咲くんだ。だから俺は必ずそれを手に入れる。そして魔人族の血もな」

「魔人族の血だと?! 魔人族はもう何百年も前に人間族によって滅ぼされたんだぞ。生き残りが居るって話しは聞いた事がない」