「いつかみんなとまた――」
 
そんな約束をしたのは、今からもう何年前の話になるだろうか? 

いや……そもそも何年前と言う年数でもないか。

「はあ……」
 
そっと息を吐いて閉じていた目を開く。

変わる事のない景色が目の前に広がり、私(オレ)は自分の手のひらを見下ろした。

「まったく、魔法協会の奴らも懲りないものだな」
 
私をこんなところに閉じ込めたって、あいつらが私の力をコントロール出来るはずがないと言うのに。

現にこの部屋には何人もの凍死体がゴロゴロと床に転がっている。

それは全て私の力によって殺された者ばかりだ。
 
この内に秘められし【氷結の力】が、主ではない者を殺そうとして力を発動させる。

それは今の私でも抑える事の出来ない物だ。

こんな風になってしまってからは、以前よりも氷結の力を抑える事が難しいんだ。
 
そのせいで魔法協会の奴らも怖がって、この部屋に自ら入って来ようとはしない。

まあ……ある男を一人除いてだけどな。
 
そして奴らは私がその力を使って逃げ出さないようにと、手首や足首に枷を付けて拘束していた。

私がその気になれば、こんな枷くらい簡単に凍らせて壊す事は出来る。

しかし主が居ない現状で、私は外に出る気を一ミリも持ち合わせていなかった。
 
今になって外に出たところで色々と面倒なだけだからな。

きっとあいつらにそう説明しても、聞く耳は持たないだろう。
 
他の守護者たちの行方は気になるが、私が探し出せる守護者はたった一人だけだ。

「【コスモ】は……まだ目覚めていないのか」
 
気が向いた時にはあいつの魔力を探って、目が覚めたかどうかを確認している。

しかし魔力を感じられないって事は、あいつはまだ目が覚めていないんだろう。
 
少し遅すぎじゃないのか? そう思いながらあいつと交わした約束の事を思い出し、自然と軽い笑みがこぼれた。

「確かマールは目が覚めているんだよな?」
 
前にあの男がそんな事を言っていた気がする。

直接この目で見て来たとも言っていたが、果たして事実なのだろうか? 
 
どちらにしろ主のいない私は、この状況ではいつ外に出られるか分からないからな。

マールと合流するにしても、あいつは今海の中に居るっていうじゃないか。

さすがの私でも海の中まで行くのは――

「お前が氷の女神か?」

「――っ!」