「オフィ……リア？」
　
オフィーリアの姿を見て、レーツェルとアルも驚いて目を丸くする。

俺は伸ばされた手を取ってオフィーリアを見つめた。

「ブラッド……私も……あなたを……愛しています」

「っ！」
　
その言葉を聞いた時、俺の左目から一滴の涙が零れた。

そんな俺に彼女は最後の力を振り絞って、俺に自分の唇を押し当てた。

そんな彼女に応えるように、俺はオフィーリアの手を握りしめて目を閉じた。
　
オフィーリアは唇を離すと目尻に涙を浮かべる。

「ようやく……ようやく……伝えられました。私は……これでもう……満足です」
　
彼女が優しく微笑んで見せた時、目尻に溜まった涙が頬を伝った。

そして俺はオフィーリアの体が徐々に冷たくなっていっている事に気づいた。
　
彼女の【満足です】と言う言葉が再び脳裏をよぎり、焦った俺は口を開く。

「満足だなんて……そんなこと言うなよ！　俺はまだ、お前に見せたい物がたくさんあるんだ！　お前と一緒に……いろんなところに行って、たくさん思い出を作って！」
　
抑えていた感情が一気に溢れた。

彼女に伝えたい事が、言いたい事がたくさんあったはずなのに、上手く言葉にする事が出来なかった。
　
それが悔しくて、切なくて、俺は唇を噛んで視線を下に投げ、ただ小さくぽつりと言う。

「お前と一緒に……未来を作りたかった」
　
その言葉にオフィーリアは弱く微笑むと、俺の目尻に溜まっている涙を指先ですくった。

「私も……ブラッドと……未来を作りたかったです」

「……オフィーリア」

「きっと……ブラッドと一緒に歩む……未来は……毎日が……幸せで、きっと……光輝いているんだと……何度もそう思いました」
　
そのとき手の中からオフィーリアの手が零れ落ちた。

「――っ！」

「私は……この世界が……好きです。……あなたと出会えたから……。また……もう一度あなたと……出会えたら……今度こそ……一緒に……未来へ……」