ウリエルは背負っている小さな鞄から、とある紫色の小瓶を取り出した。

小瓶の中には赤い液体が入っていて、その色はまるで人が流す血色のようだった。

「……それは?」

「ちょっとした物です。あなたにはこれを使って、ある人物を殺してもらいたんです」

「っ!」
 
これを使って誰かを殺す?! 

まさか……このわたくしに人殺しをさせるって言うんですの?!

「悪いですけどお断りさせて頂きますわ。どうしてわたくしが見ず知らずの方を、この手で殺めなければならないと言うんですの?」

「これは兄上が決めたことです。僕のほうからとやかく言うことは出来ません。それにあなたに殺して欲しい人は、【人間でも何者でもない存在】です」

「……は?」
 
人間でもない何者でもない存在? 

そんな物がこの世に存在しているって言うんですの? 

まさかそれもクラウンと何か関係していて……。

「あなたに殺してもらいたい人は、この世に存在してはいけない存在です」

「……その者の名は?」
 
わたくしの言葉にウリエルは軽く笑みを浮かべると言う。

「彼女の名は【シエル】。【人間をやめさせられた怪物】ですよ」