「当然、私もあなたと同じく最初は有り得ないと思っていたよ。でも私は彼に会って確信したんだよ」
 
ミカエル様は閉じていた両目を薄っすらと開くと、瞳の中にブラッド様の姿を映す。

その姿にわたくしは思わず後退ってしまった。

「彼の父、クロードに抱きかかえられながら、まだ赤子だったブラッドを見た時、私は彼に【七大精霊たちの加護】を感じ取ったんだよ」

「加護? それではブラッド様は、生まれた時にはもう無意識に七大精霊様たちと契約を交わしていたって言うんですの?!」

「そうだね。でも彼はその事に気づいていない。だから七大精霊たちはずっと側に居ながらも、彼に認識されていないせいで姿を見せる事が出来ない。しかし唯一その姿を現す事が出来たとするなら、それは彼がトトの魔力を使おうとした時だ」

「……っ」
 
ミカエル様の言葉に私は何を言ったら良いのか分からず、ただブラッド様の姿をこの目に映した。

そして一瞬抱いてしまった言葉を思わず口にする。

「それではまるで……こうなる事は、必然だったのではないですか」

「ああ、そうだよ」
 
わたくしの言葉を聞き逃さなかったミカエル様は、そうきっぱりと言い捨てる。

そんなミカエル様にわたくしは目を見張りながら、彼に怒りの感情を抱いてしまう。

「あなたは全てを知っていたはずです。こうなる事が分かっていたのなら、なぜ彼等を助けてあげなかったのですか?」

「いや、だって助ける義理ないからね」

「っ!」
 
この男は……! わたくしは今直ぐにでもミカエル様に斬りかかろうとして、魔剣マールの柄を力強く握りしめた。しかしその時、わたくしの喉元に一本の剣の切っ先が触れていた。

「――っ」
 
目を瞬かせた時、わたくしの目の前にはもう一人、フードを被った人物が腰にある剣を抜いて、ミカエル様を守るように私に剣を向けていた。
 
気配を一切感じさせず、あの距離からわたくしまでの距離を一気に縮めたというんですの? 

わたくしは息を思い切り飲み込んでから柄から手を離した。