ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「くっそ…………くっぅ………くそぉぉぉぉ!!!!」
 
涙をボロボロと流しながら俺は目をぎゅっと閉じた。

そしてオフィーリアたちが居る方へと体の向きを変え、二人の元へ戻って行く。

そんな俺の後にアルも続き、俺たちはレーツェルの側へと降り立った。

「ブラッド……。アムール様……」
 
俺は地面に片膝を付きオフィーリアの体を抱き起こした。

そして彼女の胸元にある、砕け散った後の星の涙を見下ろした。

「ごめ……オフィーリア…………ごめん!!!!」
 
彼女の体を力強く抱きしめながら俺は泣いた。

その涙は彼女の頬へ落ちると頬を伝っていく。

「絶対……守るって言ったのに……そう約束したのに……俺は!!!!」
 
お前を守る事が出来なかった。

自分のせいで死なせてしまった。

力が足りなかった。

強くなったと思っていたのに、全然強くなれていなかった。

魔剣の力を手に入れても、魔剣の力を物にしても、何をしても俺は……世界で一番大切な人を守る事が出来なかった。
 
何もかもが……遅かったんだ。

俺は……結局最後まで……彼女に守られていたのだから。

✭ ✭ ✭

「……っ。アムール様……!」
 
俺は涙をボロボロと流しているレーツェルの体を抱きしめた。

そして声を押し殺しながら泣いているブラッドの背中を見つめ、脳裏にあの時の光景がフラッシュバックした。

「……ヘレナ」
 
あの時の光景を思い出した俺は歯を強く噛み締めた。
 
今回も俺は守る事が出来なかった。

ブラッドに俺の力を授けても、あいつの大事な者を守り抜く事が出来なかった。

「俺の力は……いったい何の為にあると言うんだ!」
 
ブラッドには俺と同じ思いをして欲しくなかった。

こんな思いは……こんな光景は……二度と見たくなかったと言うのに!
 
そう心の中で叫んだ時、俺の頬に涙が伝った。

「アムール様……」
 
その涙に気づいたレーツェルが顔を上げ、心配そうに俺の事を見てくる。

そんなレーツェルの体をもっと強く抱きしめ、彼女の髪に顔を埋めた。

「レーツェル。……結局俺は何一つ守れなかった。ヘレナだって……オフィーリアだって……お前のことだって……」
 
どうしてエアは俺に【愛する者を思えば思うほど、魔力を増していく】、なんて言う力を授けたんだ? 

こんな力……ブラッドのような人間が主でなければ全然役に立たないものだ。
 
それだというのに、どうして彼女は……?
 
レーツェルは俺の背中にそっと腕を回すと抱きしめ返してくれた。

俺は彼女の腕の中で後悔しながら、声を押し殺して泣く事しか出来なかった。