ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「そんなの……クソくらえだ!」
 
俺の言葉にクラウンは浮かべていた笑みを消すと眉を寄せた。

「オフィーリアはその運命を受け入れず、逆らおうと足掻いている! 他の誰よりも生きたいと強く願っているんだ!」
 
俺と最初に出会った頃のオフィーリアは、もしかしたら自分の運命を受け入れていたのかもしれない。

生きる事を諦めていたのかもしれない。
 
でもそんな彼女が俺と一緒に未来へ行こうと言ってくれた。

それは生きる事を諦めず、運命の呪いに立ち向かう覚悟を持てたからなんだ。
 
当然、俺だってオフィーリアと一緒に未来を歩みたい。

だから俺は……絶対に諦めねぇ!!

【それがお前の応えだな】
 
するとまたさっきの男の声が耳に届いた。

「ああ、そうだ! 俺は絶対に諦めない。俺は絶対にオフィーリアと一緒に未来へ行く!!」
 
その覚悟を声の主に伝えた時、右目が大きく脈をうった。

「うっ!」
 
な、なんだ?

【その覚悟……確かに受け取らせてもらった。だったら俺も諦めるわけには行かない】
 
すると俺の中にある雫が声の主に反応かのするように、徐々に魔力を高めていくのを感じ取った。

「お前は……いったい誰なんだ?」
 
俺の質問に声の主は最後に言う。

【俺は……お前であって、お前は俺だ。だがお前は……俺じゃない】
 
その言葉を最後に声は聞こえなくなった。

一瞬の出来事で何だったのか分からないけど、今は目の前の事に集中しなければならない。
 
オフィーリアと一緒に未来へ行くために今の俺に出来る事は――

「お前が……お前がこの世界のトトになると言うのなら! 俺が!!」
 
脳裏にオフィーリアの笑顔が浮かんだ。
 
ブラッド――
 
優しく微笑んで俺の名前を呼ぶ彼女の姿が消え、俺は歯を噛み締めて叫んだ。

「オフィーリアが幸せになれる世界を作るために、俺がこの世界のトトになってやる! エアのトト何かじゃない、オフィ―リアだけのトトに俺はなる!!!」
 
そう叫んだ時、再び右目が大きく疼いた。

しかし嫌な感じは一切なかった。

だから俺はためらう事なくゆっくりと右目を開いた。
 
そして見開かれた右目を見たクラウンは焦った顔を浮かべた。

「まさか……!」
 
疼いた右目をゆっくりと開いた時、俺の右目は紅い瞳から碧眼の瞳へと変化を遂げていた。

「どういう事だ! あの瞳が自ら変化を遂げるなど……。そんなこと……そんなこと有り得るはずがない!」

「……この右目がどういう存在なのかは、今の俺には分からない。でもこの右目を貰って、一つだけお前に感謝している事があるんだ!」