「黒の精霊よ、新月の精霊よ、幻影の精霊よ、その力を我が魔剣クリエイトに集め、目の前の者を新月の闇の中へと誘いたまえ」
 
その言葉で生み出された黒い剣は一斉に矛先を俺に定めた。

新月の剣(ルーナ・ノア・イスパーダ)
 
魔剣クリエイトが振り下ろされた時、新月の剣が一斉に俺目掛けて飛んでくる。
 
まずいと思った俺は右目に魔力を注いで、神の守りの強度を上げる。

「光の精霊よ、守護の精霊よ、その力を持って我を守りたまえ、神の守り!!」
 
神の守りを三重に張ったと同時に、新月の剣は次々と神の守りにぶつかっていく。

「ぐっ!」
 
一つ一つの一撃が大きく、俺の体は神の守りを張りながら少し後退して行った。
 
くっそ……思ったよりも威力が強い……このままだと……殺られる! 

一瞬死への恐怖を覚えた時、誰かの声が耳に届いた。

【こんなところで諦めても良いのか?】

「――っ!? 誰だ……?」
 
声の主の姿はどこにも見当たらない。

しかし声だけが俺の頭の中で響き渡った。

【こんなところで諦めて良いのかって聞いているんだ。……答えろ】
 
その上から目線の口調に苛立った俺は、今はそんな事を言っている場合じゃないと思いながらも言い返す。

「誰がいつこんなところで諦めるって言った! 俺は少しもそんな気なんてねぇぞ!」
 
ここで諦めたら全てが終わってしまう。今の俺の後ろには守るべき大切な人が居るんだ。

オフィーリアのためにも、こんな俺に力を貸してくれたアルとレーツェルのためにも、そしてこの先の未来のためにも、こんな奴の思い通りにさせるわけには行かないんだ!
 
そのときクラウンの声が耳に届く。

「そこまでして愛した者を守って、一体どうするって言うんだ? 俺が彼女を殺さずとも、いずれ運命という名の呪いで死んでいたと言うのに」

「……っ」
 
運命という名の呪い……。

確かにあいつの言う通り、星の涙を体内に宿しているオフィーリアは、星の涙に魔力を全て吸収されて、いずれは死んでしまうのかもしれない。

星の涙を体内に宿した者は、絶対にその運命から逃れる事は出来ない。

だが……。