「クラウン!!! お前……一体何を!!」
 
クラウンは目を細めると、俺たちをあざ笑うように見下ろしてきている。

「一体何をって? 俺は何もしていないけど?」

「は……?」

「俺はいつも通りただ普通に魔法を放っただけさ。何かしたとするなら、それは星の涙の意思ってやつだ」

「っ!」
 
星の涙の……意思だと?

「きっとオフィーリアが思ったことを、代わりに星の涙がやってくれたんだ」

「……お前……何を言って……」
 
クラウンはニヤリと笑みを浮かべると言う。

「オフィーリアはこう思ったはずだ。もう自分のせいでブラッド君が傷つくところなんてみたくない、だったら自分がブラッド君を守りたいと、その気持が星の涙に強く響いて、代わりに君が受けるはずだった俺の攻撃を、オフィーリアに受けさせたんだ」

「な、ん……」
 
それじゃあ……オフィーリアは俺のせいで死んだっていうのか? 

そう思った時、俺の中でどす黒い感情がたくさん生まれた。

それはどんどん心を飲み込んでいき、負の感情で俺を支配しようとした。

「それに俺を選ばないエアなんて、この世界には必要ない。この世界のエアが彼女である必要もないからな」

「……っ」
 
その言葉を聞いてクラウンを見上げた時、あいつの手の中に星の涙の欠片がある事に気がついた。

そしてその一欠片からは確かに星の涙の魔力が感じられた。

「あ、れは……!」
 
星の涙はまるで自分の居場所を俺に伝えようと必死に青白い光を放っている。

もしかしたら……まだ間に合うのかもしれない。

あの欠片をオフィーリアの体に戻せば……きっと!

「……アル。俺と来てくれ」

「……どうするんだ?」
 
俺はオフィーリアの目をそっと閉じ、そのまま体を優しく地面に寝かせて立ち上がった。

「あの欠片を……奪い返す!」
 
その言葉にアルはクラウンへと視線を送ると大きく頷いてくれた。

「アムール様……」
 
そんなアルをレーツェルは心配そうに見つめる。

アルはレーツェルの体を優しく抱きしめると言う。

「心配するな、レーツェル。必ず戻って来るから、お前は彼女の側に居てやってくれ」
 
アルの言葉に頷いた彼女は、胸の前で手を組むと俺に守護魔法を掛けてくれた。