「本当に俺がこの世界のトトになれるはずがないって、本気で君はそう思っているのかな?」

「っ?! それはどういう意味だ!」
 
あいつは何を言っているんだ?! 

オフィーリアが居ない限り、あいつはこの世界のトトにはなれないはず。

それ以外にこの世界のトトになれる方法があるって言うのか!?
 
クラウンはクリエイトを鞘に戻す。

その姿を不審に思った時だった。
 
クラウンはオフィーリアに右手をかざすと、彼女の星の涙に向かって魔法を放った。

「っ! オフィーリア!」
 
俺は直ぐ後ろに居たオフィーリアの前に立って神の守りを張ろうとした。

だがクラウンが放った魔法は既に俺の後ろに存在していた。

「――っ!」
 
放たれた魔法は鋭い黒槍へと変化すると、オフィーリアの体ごと星の涙を貫いた。

「ブラ……っ」
 
貫かれた星の涙は全域にヒビ割れが生じ粉々になって宙を飛んだ。

青白い光を灯してた星の涙からは光が失われ、同時に彼女の瞳からも光が失われた。
 
その光景が全て一瞬に見えた俺は目を丸くして叫んだ。

「オフィーリアぁぁぁぁ!!!」
 
体が震えた。

心臓が大きく跳ね上がると、ドクンドクンと心拍数を上げていく。
 
オフィーリアの体はそのまま後ろに倒れ込み、俺は何とか彼女の体を抱きとめて名前を叫んだ。

「オフィーリア! しっかりしろオフィーリア!!」
 
なぜだ?! 

どうしてだ!? 

そんな言葉ばかりが頭の中を必死に駆け巡っていった。
 
確かに俺はオフィーリアの前に立って、神の守りを張ってクラウンが放った魔法から彼女を守ろうとした。
 
しかしあいつが放った魔法は、俺が瞬きをした時にはもう後ろに存在していた。

そしてそれは俺が振り向ことを許さず、オフィーリアの体ごと星の涙を貫いた。
 
砕け散った星の涙の欠片たちはあちこちに散らばっている。

その中の一欠片を星の涙を貫いた黒槍は飲み込むと、クラウンのところへ戻って行く。

「お、オフィーリア……!」
 
オフィーリアの光が失われた目を見たレーツェルは、体から力が抜けてしまったのかその場に座り込んでしまった。

「レーツェル!」
 
そんな彼女の両肩を支えたアルも、一緒になってその場に座り込んだ。

「オフィーリア……! オフィーリア!!」
 
彼女の体を何度も揺らして、何度も彼女の名前を呼び続けた。

しかし何度それを繰り返しても、彼女の目に光が戻る事はなかった。
 
それを見た俺の心臓の鼓動が徐々に早くなっていき体が熱くなってくる。

俺は怒りで体を震わせ、目尻に涙を浮かべるとクラウンをギロリと睨みつけた。