ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「とりあえず君は今直ぐ消えてください。僕が今必要としているのは君ではなく、後ろにただ座り込んで見ている事しかしていないオフィーリアさんだけなので」

「っ!」
 
アルファの言葉が鋭い矢となって私にグサリと突き刺さった。

そして彼から目を逸した時、レーツェルは軽く笑みを浮かべた。

「奇遇ですね。私も同じ事を思っていました。今の私にとっても、オフィーリアはかけがえのない大切な人で、心から必要としている人なんです。なので、クラウンの命令に従うことしか出来ないあなたが消えてください」
 
レーツェルは目を閉じると詠唱を始める。

「光の精霊よ、守護の精霊よ、加護の精霊よ、我の呼びかけに応えたのなら、その力を聖なる光へと変え、我らを守りたまえ」
 
そしてこちらを見下ろしているアルファも詠唱を始める。

「闇の精霊よ、黒の精霊よ、破壊の精霊よ、その力を一つとして我に力を貸し与えよ」
 
アルファの頭上に浮かぶ大きな黒玉は、赤い火花をバチバチと走らせながら、少しずつ大きくなり始める。

その大きさは私たちの居る場所を、丸々と飲み込む事の出来る大きさにまで成長しつつあった。

「あの魔法は……!」
 
あれは確かブラッドの屋敷や、その周辺の森を軽々と吹き飛ばした魔法だったはず。

ブラッドですらも防ぎ切れなかったあの魔法を、レーツェル一人が防ぎ切れるはずがない! 

そう思って咄嗟に彼女を見上げた時、レーツェルの周りに白銀色の光をまとった精霊たちが集まってきている事に気がついた。
 
精霊たちはレーツェルに集まると、彼女の背後に目を閉じて祈りを捧げている一人の女性の存在を作り出した。
 
アルファに向かって両手をかざしていたレーツェルは、神へ祈りを捧げるように指を絡めると、地面に膝をついて詠唱を続けた。

「我は神へ祈りを捧げる者なり」
 
その言葉と同時に彼女の背後に居る女性が、優しく私たちの体を包み込んでくれた。

「……温かい」
 
私たちの事を見下ろしてきているアルファは、歯を噛みしめると酷く表情を歪めた。

「神なんて……女神なんて……この世に存在するはずがない! だってあいつらはただ見ているだけで、自分たちから手を差し伸べることはないんだ! 絶対に!!!」

「……アルファ?」
 
アルファは頭上にかざしていた左手を振り下ろす。