ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

そんなトトにあの人がなれるはずがない。

だからレーツェルの言う通り、誰もあの人に従わないだろうし、トトとして認めることはないと思う。

私も……あの人だけは絶対にこの世界のトトとして認めるわけにはいかない!

「確かにクラウンは……君からしたら……決してトトになり得る存在ではない。でも……僕からしたらクラウンこそが……誰よりもこの世界の事を考えていた人物……なんだ」
 
そのときクリエイトが言っていた言葉を思い出した。

……どうしてクリエイトはあんな事を言ったのだろう? 

クラウンこそが誰よりもこの世界の事を考えていた人物だなんて、私にはそうは思えない。
 
クリエイトはいったい何を思って、クラウンを主として認めたの? 

クラウンを自分の主として認めた事は、本当に自分の意思だったのだろうか? 
 
レオンハルトの話にアルファは溜め息を吐くと言う。

「クラウン様がトトになれば、彼等が従うのは必然ですよ。君たちの意思とか、そんなもの関係ないんだよ」
 
そう言ってアルファは左手を頭上にかざすと、黒く大きな玉を生み出し始める。

「どうせ主を持ったところで最後は裏切られて、何もかもはい……お終いなんですよ。それだったら裏切られる苦しみを知る前に、強制的に従わされる方が自分のためになる。裏切られる恐怖に怯える必要もないし、自分の意思を持つ必要もない。ほら? とっても楽なことじゃないですか」

「な、何ですって!」
 
レーツェルはその言葉で更に表情をキツくした。

アルファによって完全に堪忍袋の緒が切れたのか、彼女の体から怒りのオーラが発せられて見える。

そんなレーツェルを見るのも初めてだった私は、思わず後ろに少し下がってしまった。

初めてレーツェルの事を【怖い】と思ってしまい、頬に一滴の汗が流れ落ちた。

「その言い方では、まるで私たちがあなた達にとって、ただの道具扱いされているだけじゃないですか! 私たちはあなた達の道具になるために、魔剣となったわけではありません!」
 
レーツェルは私の前に仁王立ちすると、アルファに向かって両手をかざした。

「私たちは魔剣でもあり一人の人間でもあるんです! ただ良いように利用されるだけの人形ではありません。そう……クラウンに良いように利用されているあなたとは違います!」

「っ! ……何だって?」

アルファは鋭く目を細めると、ギロリとレーツェルを睨みつけ返した。

レーツェルの言葉に酷く苛立ったのか、アルファはありったけの魔力を大きな黒玉に注いでいく。
 
その光景を見て流石にまずいと思った私は、レーツェルに声を掛けようとした。

しかしレーツェルは決して物怖じせず、真っ直ぐアルファを見据えながら魔力を高める事に集中していた。