「……っ」
 
記憶の中に彼女が居るって事は、あの子はこの世に存在しているってことで良いんだよな? 
 
そして俺はこの部屋で少なからず、彼女と生活を共にしていた。

だから同じベッドが二つあって、クローゼットの中には色とりどりの女性物の服が何役もハンガーに掛かっていたんだ。

それはきっと俺が彼女に着て欲しくて用意したんだろう。

「……探してみるか?」
 
ふとそんな考えが俺の中で過った。
 
しかし探すと言っても彼女がどこに居るのか分からない。

手掛かりだって何一つないんだ。

彼女の情報があるとしたら一つ、【白銀の髪を持った女性】と言う事だけだ。
 
街の人に聞いても【知らない】、【見たことがない】、【そんな人が居るのか?】と言う返事が返ってくるだけだ。

白銀の髪なんてこの世界じゃ珍しいからな。
 
だから自分の事を知られないように、人目のつかないところにいくはずだ。

自分の身を守る……ために。

「――っ!」
 
そこで俺は首から下げられている守護石を見下ろした。

「まさか……!」
 
もしかしたらこのネックレスは彼女の持ち物だったんじゃないのか? 

そう思った時、俺の頬に一滴の汗が流れ落ちた。

「……俺を守るために?」
 
彼女が俺を守るためにこの守護石を置いていったとするなら全て納得がいく。

どうして彼女の事を覚えていないのかも、なぜ主を守ると言われる守護石を俺の元に置いていったのかも、【俺を守るために】と思えば全ての糸が繋がる。

自意識過剰かもしれないが俺はそう思えるんだ。

「どうして……そんなこと」
 
やっぱり俺にとって彼女は特別な存在だったんだ。
 
だったら……俺がやるべき事は一つだ。

「……待ってろよ」
 
俺がお前の事を見つけ出してやる。

どうして俺の記憶を消したのかも、なぜ俺を守る為に守護石を置いていったのかも全て、ちゃんと理由を聞くからな。

だからそのときまで……どうか無事で居て欲しい。

俺が見つけ出すまで……どうか――