ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「きゃああっ!」
 
闇の玉が左肩を強く掠めた時、私の体は後ろにのけぞった。

後ろに全体重が掛かり、私の体はそのまま崖へと放り出された。

「――っ!」
 
落ちる! そう思ってギュッと目を瞑りかけた時だった。

「ん?」
 
崖底へと落ちかける私の体を、金色の光がそっと優しく包み込んだ。

「……これは」
 
この光たちには覚えがあった。

それは小さい頃から側に居てくれた存在たちで、ずっと私のことを見守ってくれていた存在たち。

そうこれは――

『遅くなってしまってすみません、オフィーリア』
 
すると私の目の前に魔剣レーツェルが姿を現した。

その姿を見た私は涙を流しながら、彼女に向かって手を伸ばした。

「レーツェル!」
 
レーツェルは元の姿に戻ると、私が伸ばした手をそっと優しく取ってくれた。

おかげで何とか崖底に落ちずに済んだ私はその場に座り込む。
 
レーツェルは私の足首に絡まっている黒影の鎖に気づくと、それに向かって右手をかざした。

すると黒影の鎖の周りに白銀の精霊たちが集まると、跡形もなく浄化してくれた。
 
自由になった足を見下ろしてホッと息を吐く。

しかし直ぐに申し訳ない顔を浮かべた。

「あ、ありがとう、レーツェル。……ごめんさない……私は――」
 
彼女に謝罪の言葉を述べようとした時、レーツェルは人差し指を立てると、それを私の唇にそっと押し当てた。

彼女の行動に目を瞬かせて顔を見上げた。

「オフィーリア。あなたが謝る事は何一つないんですよ? だってこれは、あなたが愛する人を守るために覚悟を持ってやったことなんですから。それを私が咎める権利はありません。もし私もあなたと同じ立場に立っていたら、きっと同じ事をやっていたと思うのです」
 
そう言ってレーツェルは私の体を抱きしめると治癒魔法を掛け始める。

彼女の温もりが暖かく感じて、そのとき私は昔の事を思い出した。

「オフィーリア。大丈夫ですよ」
 
家族や一族を皆殺しにされて、星の涙と魔剣レーツェルを託された私は、毎日を怯えながら送っていた。

またいつあの人たちが星の涙を狙って現れるのかも分からず、たった一人で魔剣を集める旅に出て、右も左も分からずどうしたら良いのか分からなくて、怖くて、悲しくて、寂しくて泣いていた時、レーツェルが私の手を取ってくれた。