ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「いいえ、そんなことありません。あなただって見たでしょう? ブラッドがここへ向かって来ていると知った時のクラウンの表情」

「……っ」
 
あのときの事をアルファは思い出したのか、凄く嫌そうな表情を浮かべると私から目を逸した。
 
アルファだって直に感じたはずだ。

あのときクラウンから発せられた殺気を。

それは私なんかよりも直ぐ近くに居たアルファの方が感じ取れたはずだ。

きっと鳥肌が立つだけじゃ済まなかったと思う。

「……はあ。どうやら説得は無理のようですね」
 
そうボソッと呟いたアルファは、説得することを諦めたのか左手を私にかざした。

その姿に私は目を見張る。

「君にはシエル様の母親になって欲しかったんですけど、もう結構です」
 
すると私を取り囲むように闇の玉(ダークボール)が現れる。

「殺さない程度に君には傷ついてもらいます。逃げようとしたから、ちょっとお仕置きをしましたとあの人に報告すれば、きっと分かってくれると思うので」
 
そう言ったアルファはニヤリと笑みを浮かべると、左手を振り下ろした。

そして私を取り囲んでいた闇の玉たちは順番に私目掛けて飛んで来る。
 
私は何とか最初に飛んできた闇の玉を避けて、その場から走り出そうとした。

しかしアルファによって放たれた黒影の鎖(シャドウチェイン)が、鎖音を立てながら足首に巻き付いた。

「きゃっ!」
 
そのせいで足の自由が奪われ、私はそのまま地面へと倒れ込んだ。

「ふっは……はは……あははは。君って本当に一人だと何も出来ないですよね」
 
アルファはお腹を抱えながら笑った。

そして再び私に左手をかざすと闇の玉を放った。

「あうっ!!」
 
勢いよく闇の玉が体にぶつかり激痛が走る。

でも私は何とか痛いのを我慢しながら、鎖が絡まっている足首を瞳に映した。
 
今の私だけじゃこれを解くことは出来ない。

レーツェルが居てくれたら……。

ううん、レーツェルが居てくれたらなんて甘い考えを持っちゃ駄目だ。

今は私一人なんだ。

だから一人で何とかしなくちゃいけないんだ!