「じゃあ三日後に、スレインに向かってここを発つ」

「了解だ。ミリィには何て言って行くつもりだ?」

「依頼された事件の調査って言っておけば良いだろ? 俺が行くなんてことは言う必要ないからな」

「わ、分かった……」
 
こいつのこの言い方……自分が謹慎中だってことミリィに言ってないな。

そりゃあ言ったら言ったで面倒な事になるのは目に見えているけど、せっかく恋人同士になったんだから、幼馴染としてはミリィを不安がらせるようなことはあまりしないで欲しいと思うところだ。

「話しは以上だ。俺も色々と準備があるからこれで帰るよ」

「当時は朝六時に駅集合で良いのか?」

「それで構わない」
 
手帳を上着の右ポケットにしまったレオンハルトを玄関まで見送り、俺はそのまま自室へと戻った。

✩ ✩ ✩

自室に戻った俺は部屋にあるソファーにどかっと座って額に手を当てた。

軽く息を吐きさっきの記憶の事を考える。

「俺にとって……あの子は」
 
あの子の事を思い出そうとしたのは、何もこれが初めてと言うわけじゃないんだ。
 
何度も同じ夢を見る度に彼女の事が気になって気になって、だから思い出そうとした。

しかしその度に何度も激しい痛みが頭を襲った。

そのせいで思い出す事を辞めたくなったが今回は違った。

今日は断片的だが彼女の事を思い出しかけた。
 
でもまた直ぐに記憶は糸が切れたようにぷつりと途絶えてしまった。

「……くそ」
 
彼女の事を考える度にどうしてこんなに息苦しくなるんだ? 

なぜ彼女を思うと泣きたい衝動に駆られる? 

どうしてこんなにも……複雑な気持ちになるんだ?