ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

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服を着替え終えた私は、ベッドの上で膝を抱えながらうずくまっていた。

そしてここから遠く離れた場所でぶつかり合っている魔力を感じて、膝に埋めていた顔を上げた。
 
その魔力の波動は前にも感じ取ったことのある物だった。

この魔力は間違いなく彼の……。

「……ブラッド」
 
私は碧眼の瞳を揺らしながら窓の外を見つめた。
 
ブラッドだ……本当にブラッド来ているんだ。

そう思いながら私は胸元にある星の涙にそっと触れた。
 
彼は私のことを思い出してくれた。だから私を助けに来てくれた。……でも。

「……っ」
 
私はクラウンと約束を交わした。

私が彼の側に居る限り、ブラッドへは決して手を出さないと。

でもブラッドは今まさにベータとガンマと戦っている。

そうなるとクラウンは私との約束を破ったことになる。
 
だったら私も彼との約束を果たす義理はもうない。

今直ぐここから逃げ出して、ブラッドと合流するために彼の元へ向かうことが出来る。
 
でもまたもし、私を庇ったせいでブラッドが大怪我を負ってしまったら、今度こそ死んでしまうかもしれない。

それだけは……絶対に嫌だ。
 
それに私は一度ブラッドの記憶を勝手に忘却してしまっている。

そんな私を彼は許してくれるだろうか? そんな考えが頭の中を過るたびに私の体は震えた。
 
私はベッドから下りて窓の前に立った。

そして窓ガラスを軽く前に押した時、ふわりと吹き込んできた風が私の髪をなびかせた。

「大丈夫よ、オフィーリア。私の知っている彼ならきっと……」
 
彼にきっと会ったら怒られるかもしれない。

もしかしたら嫌われて拒絶されてしまうかもしれない。

でも……それでも構わなかった。
 
最後にもう一度だけ彼に会えるのなら嫌われたって言い。拒絶されたっていい。だから私は……。

「ブラッド。今……あなたの元へ」
 
そう決心して外に手を伸ばした時だった。

『どこに……行くの?』

「――っ!」
 
部屋の扉近くで聞き覚えのない声が耳に届いた時、びっくりした私は肩を上げた。

そして恐る恐る後ろを振り返ると、そこには真っ黒な剣が宙を浮かんでいた。