ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「約束する。俺は必ず生きてみせるよ。自分の命を捨てるような事は絶対にしない」
 
その言葉を最後に、頭の中で流れた記憶はぷつんと途絶えた。

「……っ」
 
そしてまた俺の中でとある感情が暴れた。

その感情はまるで俺自身に何かを叫んでいるようで、喉元まで出かかっているある言葉を言わせようとする。
 
しかし俺はそれをグッと押し込んで飲み込んだ。

すると俺の中で暴れていた感情は落ち着きを取り戻すと、ずっとずっと暗い奥の方へと引っ込んで行った。

「ブラッド、大丈夫か?」

「あ、ああ……平気だ」
 
俺は額に浮かぶ汗を拭って視線を下に投げた。
 
あの記憶の中に居た女性は、夢の中で出てきた彼女なのだろうか? 

しかし今確かに記憶の中に彼女の存在はあった。

この目で月の光に照らされた彼女の白銀の髪を見たんだ。
 
どうして俺は彼女の事を知らない? 

なぜ思い出す事が出来ない? 

俺にとって彼女はいったいどんな存在だったと言うんだ?
 
きっと俺にとって特別な何かでなければ、あんな頻繁に同じ光景を夢で見ることなんてないはずなんだ。

だから……。

「……はあ」
 
一旦、自分を落ち着かせるために俺は軽く息を吐く。

そして机の上に置かれた袋をレオンハルトへと突き返した。

「悪いけど金は受け取らねぇ。そんな物無くても良い。だから今回は無条件で依頼を引き受けてやる」
 
そう言いニヤッと笑って、俺はレオンハルトに手を差し出す。

「だからお前も俺に協力しろ」
 
俺の姿に目を丸くしてたレオンハルトは、軽く笑うと躊躇うことなく俺の手を取った。

「分かった。ただ無茶はするなよ」

「ああ、大丈夫だ。自分の命をすてるような事はしないさ」
 
そう、自分の命を捨てるような真似は絶対にしない。

記憶の中に居る女性は俺を思って泣いてくれていたんだ。

だから俺は彼女との約束を守る。