部屋を出て行こうとしていたアルファは、俺の声に気づいてこちらを振り返った。

そんな彼に俺は優しく笑いながら言う。

「あまり力を使いすぎないようにね」

「……っ」
 
その言葉にアルファは軽く目を見張ると、何も言わず一礼してから部屋を出て行った。

「さあ、オフィーリア。君はいったいどちらを選択するのかな?」
 
しかし約束を守ると言っても、俺にも限界と言うものがある。

約束なんて守っていたら、彼がこの世界のトトになってしまう。

それだけは絶対に避けなければ――

『それは……無理』

「――っ!」
 
すると頭の中で聞き覚えのある声が響いた。

俺は腰から下げている真っ黒な剣に触れて低い声で問いかけた。

「無理だと? それは一体どういう意味だ?」

『彼が……トトになるのは……もう目に見えている。それは……あなたも分かっているはず』
 
その言葉に俺は唇を噛んだ。そして剣の入った鞘をわし掴んだ。

「お前は……あいつの味方をすると言うのか!」

『違う……未来が……そう言っている』
 
剣は鞘から抜け出ると俺の目の前に浮かんだ。

『彼女は……無意識に彼をトトとして見ている。それは……星の涙も同様』

「くっ……!!」
 
だから星の涙は俺の存在を拒み、トトして選ぶことは決してないと言うのか! 

もしそうだとするなら、まるで星の涙に意識が宿っているみたいではないか!

「君と話していると頭に頭痛が走るよ」

『でも……僕のおかげで君は……生きているじゃないか』
 
その言葉を聞いて俺は目の前に浮かぶ彼等を睨みつけた。

「主にそんな口を聞いても良いと思っているのか? 逆に俺が居ないと困るのはそっちの方じゃないのか? 【魔剣クリエイト】!」

『……』
 
俺の言葉にクリエイトは無言になる。

「俺は必ずこの世界のトトになるんだ! そうすれば心から欲しかった物が全て手に入るんだ! この世界の真実も! エアも! 星の涙もだ! だからお前はそのために力を貸していれば良いんだよ!!」
 
そうだ! この世界のトトになるのは俺だ! 

決してブラッド君ではない! 

あんな奴に俺の理想の世界を作る邪魔をされてなるものか!

「ああ……今になって思うよ」
 
あのとき彼を殺していれば良かった、てね。