「レーツェルは主に魔法でのサポートが多かったからな。前に出て戦う事はあまりなかったんだよ」

「それはアムール様が駄目だと言ったからじゃないですか? だから私は守護魔法でみんなをサポートしていたんです。本当は守られてばかりは嫌だったんですけど」
 
レーツェルは少し頬を膨らませるとそっぽを向いた。

思わずその姿を可愛いと思っていた時、隣から鋭い視線を感じた俺は直ぐにその考えとはおさらばした。

「じゃあ一本勝負してみるか?」
 
俺は直ぐ足元に転がっていた木の枝を持った。
 
そんな俺の姿を見たレーツェルはニッコリ笑うと、俺と同じく足元に転がっていた木の枝を握るとオフィーリアと同じ構えを取った。
 
その後案の定、俺はレーツェルから一本も取る事が出来なかったのだが、それをきかっけにやはり女は怒らせるものではないなと、染み染み実感したのだった。

✩ ✩ ✩

「すぅ〜……」
 
大きく深呼吸をして目と閉じた。そしてオフィーリアの事を思い出す。
 
出会いはお互いに最悪で、絶対に好きになる対象じゃないと思っていた。

でも俺は自分でも気づかない内にお前にどんどん惹かれていった。
 
お前の笑顔がもっと見たくて、どんな事をしたら喜んでくれるのか、どうすれば笑顔になってくれるのかって、そんな事ばかり考えていた。
 
初めて自分の本音を言えた時、本当は凄く楽になれた。

暗闇の中にずっと居た俺にお前は光を差し込んでくれた。
 
俺と出会うまでに辛い思いをして来たことを知った時、心からお前を守りたいと思った。

そして何を犠牲にしてでも必ず、オフィーリアを幸せにしてみせると心に誓った。
 
この先の未来で彼女が隣に居ないのは考えられない。

だから俺はオフィーリアと一緒に未来へ行く。

そのためにもまずは――

「オフィーリア……今、お前の側に行くからな」
 
閉じていた目をゆっくりと開き、目の前に姿を現したベータとガンマに向けて俺は魔剣アムールを構えた。