ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

その光景が瞳の中に飛び込んできて、俺はお金の入った包を数秒見つめた後、レオンハルトに視線を戻す。
 
レオンハルトは真っ直ぐ俺を見つめて真剣な表情を浮かべる。

「俺は今から正式に依頼をする」

「れ、レオンハルト?」

「三ヶ月前の事件でお前は……死にかけた。今回だってまた死にかける程の大怪我を負ってしまうかもしれないし、最悪死ぬ可能性だってあるんだ」

「……お前」
 
確かに俺は三ヶ月前の事件で死にかけた。

死んでもおかしくない程の大怪我を負い、目を覚ましたのだって事件が起こってから二週間後の事だった。

魔力を使いすぎたせいで暫くの間は体調が悪くて、目が覚めてから一週間くらいは寝たきりの状態だった。

だからこそレオンハルトは、ちゃんと俺に考えて欲しくてそう言ったのだろう。
 
依頼を引き受けるか、それとも自分の身の安全を取るのかと。
 
しかしそんなこと……俺には関係ないんだ。

クラウンを殺す事が出来るのなら何だってするつもりだ。

たとえ自分の命を使ったとしても!

「命は……大切にして下さい。あなたが死んでしまったら、悲しむ人が居るって事をちゃんと考えて下さい!」

「――っ!」
 
その時、俺の頭の中で女性の声が響いた。
 
ノイズの掛かった記憶がフラッシュバックし、激しい頭痛に襲われるのと同時に俺は頭を抱えた。

「ぐっ!」

「ブラッド?」
 
俺は顔をしかめてノイズの掛かった記憶を消そうと頭を左右に振る。

しかしその記憶は消える事なく、一部分を切り取ったように頭の中を流れていく。

「私は……あなたが死んでしまったら……悲しいです」
 
……誰だ。

「この世界には、命を持って生まれた人たちがたくさん居ます。その中には……生きたくても生きられない人だって居るんです」
 
誰なんだお前は!
 
記憶の中にいる女性の顔は見えなかった。

ただ泣いている事は声を聞いて直ぐに分かった。

そんな彼女の体を記憶の中の俺は優しく抱きしめるとこう言った。