「アムール様……」
 
アルの隣ではレーツェルが心配した顔を浮かべていた。

その事に気がついたアルは、レーツェルの頭を優しく撫でた。

「大丈夫だ、レーツェル」
 
その言葉にレーツェルは小さく頷くと俺に目を移す。

「では早速やってみましょう。ブラッドはアムール様の側に立って下さい」

「分かった」
 
二人に目を配った俺は彼女の言葉に頷いて立ち上がった。

そしてレーツェルに促されるがままアルの前に立つ。

「ではアムール様に手をかざして下さい」

「こうか?」
 
俺はアルに手をかざす。

「では私の後に続いて詠唱を続けて下さい」
 
じっとこちらを見てくるアルを俺も見ながら頷き、レーツェルは詠唱を唱え始める。

「我に力を与えし魔剣よ、汝の力を我が身に授け、さらなる力を貸し与えよ」

「我に力を与えし魔剣よ、汝の力を我が身に授け、さらなる力を貸し与えよ」
 
レーツェルに続いて詠唱を始めると、アルの姿が魔剣の姿へと戻る。
 
詠唱によって魔剣の姿に戻ったアルは、一つの紅玉へと姿を変え、紅玉は俺の前に飛んで来るとそのまま体の中へと入り込む。
 
その拍子にアルの記憶が頭の中にどっと流れ込んできた。

「ふざ……けんな! 俺はそんなこと認めない! どうして自分たちの身の安全のために、女たちを奴隷として差し出さなければならないんだ! 彼女たちの中にはまだ、成人していない子供だっているんだぞ!」
 
ある街の広場でアルは右肩から血を流しながら地面に倒れ込んでいた。

そして目の前に居るターコイズブルーのグラーデション掛かった青紫髪を持つ青年が、冷たく青紫色の瞳を細めながらアルを見下ろしていた。
 
そんな青年の隣には鎖で体を拘束された一人の女性が座り込んでいた。

彼女は目尻に涙を浮かべながら顔を青ざめてアルを見ていた。
 
すると青年の周りに同じ髪色を持った奴らがたくさん集まってくる。

そして青年は右腕を上げると集まって来た者たちに命令を下した。