まあ……最近はちょ〜っとサボってた部分はあるけど、でも魔剣の力の負荷に耐えられる力は持っていると思っている。

「アムール様。それはやってみないと分かりません。ブラッドでしたら案外簡単にやってのけてしまうかもしれませんし」
 
アルの隣でレーツェルはニコニコと笑顔を浮かべながらそう言う。

しかし彼女の言葉にアルは少し嫌そうに表情を歪めた。

「レーツェル……そう簡単に言うなよ。ブラッドが簡単にやってのけるか出来ないかは別として、俺は他の奴らと違って自分の力をまとわせたいとは思わないんだ」

「……はあ?!」

えっ! じゃあ何でこの話を自分から提案したんだよ!

「魔剣の力をまとった時、魔剣と主の意識が一つになるんです。なのでアムール様の記憶をブラッドが、そしてブラッドの記憶をアムール様がそれぞれ見る事が出来るんです」

「おい……そういう大事な事をべらべら喋るんじゃない」
 
アルは軽く息を吐くとレーツェルの額をコツンとどついた。
 
じゃあアルが俺に自分の力をまとわせたくない理由って……。

「アルにも見られたくない記憶があるのか」

「……っ」
 
俺の言葉にアルは表情を暗くすると目を逸した。

そんなアルの様子から、よっぽど見られたくない記憶があるんだと俺は悟った。
 
もちろん俺にだって見られたくない記憶の一つや二つある。

特に俺がクラウンから人体実験を受けていた時の記憶は出来ることなら見られたくない。

あの記憶は俺にとってトラウマでもあるし、思い出したくもない記憶だからな。

「アル。お前が嫌がるなら、俺は無理に魔剣の力をまといたいとは思わない。お前に辛い思いをさせるのは嫌なんだ」

「ブラッド……」
 
アルは横目で俺を見ると、右耳に付いているピアスのリボンを軽く指先で触れた。

その後直ぐに俺に向き直った。

「いや、お前には俺の力を物にして欲しいと思っている。この力はお前にとって絶対に役に立つ物だと思っているからだ。だから一日でも早くこの力を物にしろ。そしてお前が愛した者を絶対に守り抜け」

「お、おう……」
 
アルの言葉に俺は頬を赤くしてポリポリとかいた。
 
何でアルはそんなこっ恥ずかしい事を平気で言えるんだ? 

自分で言って恥ずかしいとか思わないのだろうか?