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「魔剣の力をその身にまとう?」
 
そんな話をアルから聞かされたのが、今からちょうど二ヶ月前のことになる。
 
オフィーリアの行方を追ってある洞窟の中で体を休めていた時、アルが突然そんな事を言いだしたのが全ての始まりだった。

「それはつまりアルの魔力を、俺がその身にまとうって意味で良いのか?」

「ああ、そうだ。上手くまとう事が出来れば、お前は今まで以上に強くなる事が出来る」

「っ!」
 
その言葉に俺は息を飲んだ。
 
もちろん俺は今直ぐにでも強くなりたいと思っていたところなんだ。

正直、今より強くなる事が出来ないとクラウンに勝つ事は難しいと思っていた。

右目の魔力を使ったとしても、やっぱりあいつの方が遥かに強いんだ。
 
だからアルの力を身にまとうって話しは少し驚いたけど、それで今よりもっと強くなる事が出来るなら、その力を物にすることが出来るなら俺は何でもやると決めた。

この手で必ずオフィーリアを救い出すためにもな。

「ま、今直ぐにってわけにも行かないけどな。そもそも魔剣の力を身にまとうって事は、体にもそれなりの負荷が掛かってしまうって事でもあるんだ。……正直に言わせてもらうが、今のお前のその体で負荷を耐えられるとは到底思えない」

「そ、そんなはっきり言わなくても良いだろ!」
 
こう見えて体はちゃんと鍛えてある方だと思っている。
 
確かに俺は仕事がない日は午前十時ぐらいまで寝ているし、午後は街へ行って女神たちを口説いていたし、そんな中で一体いつ体を鍛えていたんだ? って思われても仕方がないだろう。
 
でも俺はこの右目の魔力を上手くコントロール出来るようになるために、血の滲むような努力をしてきたんだ。

ギルにトレーニングメニューを考えてもらって、小さい頃からそれをコツコツとこなして来たおかげで、こうして右目の魔力を上手く扱えるようになった。

同時に体の筋肉も出来たし体力だって上がった。