ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「ふっ……まあ良いさ。時間はいくらでもある。いくら君が俺を拒み続けても、抵抗をし続けても長くは――」

「クラウン様!」
 
そのとき部屋の扉をベータが慌てた様子で勢い良く開け放った。

ベータの後に続いてアルファも、何かに焦っているような表情を浮かべながら入って来る。
 
二人は私とクラウンの姿を見ると驚いたように軽く目を見張った。

その中でもアルファは特に、青ざめた表情を浮かべると私から目を逸した。
 
クラウンはそんな事を気にする素振りは一切見せず、軽く笑って二人に声をかけた。

「そんなに慌ててどうしたんだ? 残念だが今は取り込み中なんだ。報告は後にでも――」

「あいつにこの場所を気づかれました」

「――っ!」
 
ベータの言葉にクラウンは強く目を見張った。

今にも目玉が飛び出そうなくらい見張られた目は二人へと向けられ。

「……何だと?」
 
クラウンは鋭い殺気を放った。

当然、ベータとアルフアはクラウンの殺気に驚いて数歩後退った。

しかしベータは一息吐くと口を開く。

「先程強い魔力の反応を察知しました。もの凄い速さでここへ向かって来ています」

「……まさか」
 
クラウンは私の方へ視線を戻すと、青白く光を放っている星の涙を睨みつけた。

「……なるほど。自分の魔力を微力ながら開放して、あいつに自分の居場所を教えたってわけか」
 
小さくぶつぶつと何かを言っているクラウンは、床に転がっていた仮面を取ると右顔へと付け直す。
 
そして二人へと向き直った。

「ベータはガンマを連れて、直ぐにでも魔力を察知したところへ向かって足止めをしてくれ。その間にアルファはシエルを安全な場所まで移動させて欲しい」

「はっ! 仰せのままに」

「……それは良いですけど。オフィーリアさんはどうするんですか?」
 
アルファの言葉にクラウンは横目で私の様子を伺った。

しかし直ぐに二人へ目を戻すと部屋から出て行こうとする。