ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

「…………違います」
 
違う……彼の事を忘れて良いはずがない! 

ブラッドが居てくれたから私は生きたいと思えるようになったんだ。彼が隣に居てくれたから、私は勇気を持って前に進む事が出来たんだ。

もう一度人を信じてみようと思う事が出来たんだ。

「オフィーリア……お前が好きだ……誰よりも愛している」
 
彼のおかげで私は初めて人を愛する気持ちを知る事が出来た。

だからこんなところで私は……挫けるわけには行かない!

「私は……エアなんかじゃありません!」
 
体へと伸ばされていた手首を私は力強く掴む。

「なに……!」

「私はオフィーリアです! エアじゃありません!!」
 
私はエアなんかじゃない! 私はオフィーリアと言うただ一人の人間です!
 
脳裏にブラッドの姿が浮かんだ時、星の涙から青白く眩い光が放たれた。

「こ、これはっ!」
 
星の涙は私からクラウンを引き離すと、目には見えない衝撃で彼の体を押し飛ばした。

そのままクラウンの体は、勢い良く後ろの壁へと叩きつけられる。

「ぐうっ!」
 
いったい何が起きたのか分からず、私はただ唖然としていた。

そして胸元で青白い光を放っている星の涙を見下ろした。

すると星の涙は私を守るように、青白い光で体を包み込んでくれた。
 
体中に星の涙の温かさを感じて、まるで誰かにそっと抱きしめられているような感覚に襲われた。

「大丈夫だよ」
 
と、誰かがそう言ってくれているような気もした。

「まさか……拒まれるとは……」
 
クラウンはそう言って苦笑しながら立ち上がった。

その姿に私は胸元を隠して数歩後退った。

「どうやら星の涙は俺の事を嫌っているようだね。俺はこんなにも君を愛していると言うのに」

「当たり前です。星の涙にだって、誰が良い人で悪い人かだって分かるのですから。最初から全部自分の物に出来ると思っていたのが大間違いなんです。星の涙も、私の身も心もすべて!」
 
私の言葉に反応するかのように、星の涙は一瞬強く輝きを放った。