ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.2

いつまでこんな男に怯えているんですか! 

誰も隣に居てくれない今一人で立ち向かわないでどうすると言うんですか! 

こんなところで……挫けるわけにはいかないじゃないですか!
 
私は勇気を振り絞ってクラウンを睨みつけた。

そんな私にクラウンは軽く目を見張った。

「ええ……何度だって言います! 私が愛しているのはブラッドだけです!!」

「…………ふっ」
 
クラウンは私の言う事を予想していたのか、面白おかしく高笑いを上げる。

「君はいつも俺が予想した通りの言葉を口にする。だがいつもそれでは面白くない。魔法を使って君を屈服させるのも楽しいだろうけど、それではあまりにもつまらないんだよ」

「な、何を言って……?」
 
クラウンはニヤリと笑みを浮かべると、ぐっと自分の顔を近づけてきた。

「俺が見てみたいのはね、君の心が完全に壊れた時の表情なんだよ。恐怖や絶望を感じた時の表情も中々良いものだが、もう見飽きてしまった。だから心から俺だけを欲し、俺が居なくては生きていけない体にしてやろう」

「――っ!」
 
その言葉を聞いて私の中で嫌な予感が過ぎった。

何とかしてクラウンから逃れようとした時、私の唇は彼の唇によって強引に塞がれた。

「んんっ!!」
 
前に感じた唇に生暖かい物を感じた私は、何とか体を捻らせて抵抗しようと試みた。

しかしいくら足掻いてもクラウンの体は微動だにしない。

代わりに何度も角度を変えて唇にキスの雨を落としてきた。

「んんっ……ちゅっ……んんん!!」
 
息をするのがだんだん辛くなってきて、目尻に涙が浮かんだ。
 
心から憎んでいる人とこんなこと……! 

体をしっかり抑え込まれているせいで、振り払いたいのに振り払う事が出来ない。
 
クラウンは一度唇を離すと私を見下ろした。

「やはりこれだけでは君の心は折れないか。じゃあ試しにどこまで行けるかやってみようかな? 愛していない者から口づけをされるのは、いったいどんな気分なんだい?」
 
クラウンはそう言いながら再び私に口づけを落としてくる。

すると今度は自分の舌を私の舌へと絡ませてきた。