「シエルちゃん……私はママじゃありません。もう何度言ったら良いんですか？」

「そんなことないよ？　オフィーリアは私のママだよ？　だってパパがそう言ってたもん！」
　
シエルちゃんは私の言葉に納得がいかなかったのか、頬を大きく膨らませると私の隣へと降り立った。

そんな彼女の姿を私は上から下まで見下ろした。
　
肩先まである金髪の髪は内巻きにされていて、ウルウルと涙で揺れている緑色の瞳はブラッドと同じ色をしている。

天使のように真っ白なワンピースを着ていて、裾には薄い黄色のフリルが付いている。

でもその中で一番目立っていたのが、彼女の背中から生えている真っ白な翼だった。
　
クラウンと一緒にここへ来た時、彼女は真っ白な翼をはためかせて私たちを出迎えた。

その姿を目にした時は驚いた。

まるで本物の天使が空から舞い降りて来たのかと錯覚してしまったのだから。

「ねぇ！　どうして一緒にご飯食べないの？！　パパたちと一緒に食べようよ！」
　
でも中身はこの通り子供だった。

自分の思い通りに事が運ばないと、頬を膨らませて目尻に涙を浮かべながら何度も床を転がる。

「……」

こうして彼女が私をご飯へ誘いに来るのは、何も初めてと言うわけではなかった。

何回目と言うよりも何十回目と言った方が良いのかもしれない。

とりあえず彼女は私とクラウンたちと一緒にご飯を食べたいようだった。

前に【一回だけなら……】なんて思った事もあったけど、この子はクラウンの娘であって何者かも分からない存在なんだ。

だから彼女の誘いを受ける事は今度もないでしょう。

「私は一人で居る方が好きなんです。それにお腹は減っていませんから、あなた達と一緒にご飯を取るつもりはありません」
　
そう言って私はシエルちゃんから目を逸した。
　
しかし彼女は直ぐに私の目の前にしゃがみ込んでいた。