彼女はこうしてよく私の様子を見に来てくれたり、【朝食の準備が出来た】とか言って私をここまで迎えに来てくれる。

それは全部クラウンに言われてやっている事なのかもしれない。

それか彼女自身が善意でやってくれている事なのかもしれない。

例えそうだとしても私は二ヶ月経った今でも、彼女に心を開こうとは思えなかった。

「あの、オフィーリア様――」

「要らないです」
 
私はそれだけ言うと窓の外へと視線を移す。

相変わらず雨はまだ降り続いている。

ふとそんな事を思っていた時、ベータの焦った声が耳に届いた。

「そ、そういうわけには参りません! ここへ来てからはろくに食事を取られていないではありませんか!」
 
彼女の言う通り私はここへ来てから、ろくに食べ物を食べてこなかった。

そのせいで少し痩せたかなって思っていたけど、あんな人たちと食事を共にするくらいなら、食べないで居る方が良かった。

「私の事は放っておいて下さい……一人にして」

「……っ。……かしこまりました。後ほど、こちらへ食事を運んで来ますので、この部屋で食事を取って下さい」

「……」
 
私は特に返事を返すことはしなかった。

そんな私を見てベータは軽く息を吐くと、扉を閉めると行ってしまった。

「……はあ」
 
少し申し訳ないとは思っていた。

せっかく彼女が作ってくれたご飯ではあるけど、でもやっぱり食べたいと思う気にはなれなくて。

「あれれ〜? 【ママ】はまた一緒に食べないの?」

「――っ!」
 
私一人しか居ないはずの部屋の中で、頭上から女の子の声が降ってきた。

すると私の目の前に真っ白な羽が一枚舞い降りた。
 
それを目にした私はゆっくりと息を吐いて、頭上に膝を抱えながらこちらを見下ろしてきている彼女を見上げた。