偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~

「彼女にプロポーズした。俺は結婚しようと思う、愛美と。以前、君から告白を受けた時にも言ったが……君の気持ちは受け取れない。すまない」

水城さんの言葉にとどめを刺されて、梨花さんは一瞬ふらついた。

「嘘でしょ……」

梨花さんは唇を噛み締め、すぐに正気を取り戻す。そして、いきなり私へ近づいてきたかと思うと、ぐいっと私の腕を掴んだ。

「梨花さん!?」

「こんな指輪! 捨ててやる!」

強引に指輪を引き抜こうとされ、私は前につんのめる。

「い、痛いっ!」

指まで一緒に引きちぎらんばかりの力で引っ張られ、関節が悲鳴をあげた。

「梨花! やめるんだ!」

いきなりの暴挙にすかさず水城さんが割って入り、私と梨花さんを引き離した。水城さんは眦を吊り上げ、本気で怒っている表情を梨花さんに向けた。

「ピアニストにとって指がどれだけ大切なものか、君にだってそれくらいわかるだろう!」

「わ、私……」

水城さんに言われて我に返った梨花さんは、目を見開いたまま硬直する。

「大丈夫か?」

私は指をさすりながら頷く。梨花さんがあんな乱暴なことをするなんて信じられなかった。理性を失っているとしか思えない。

梨花さん、どうしてこんなこと……。