偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~

「せっかく急いで予定を切り上げてきたのに、どうして愛美さんがピアノを演奏していたの? それに、遅れるって言ったはずなのに、来てみれば店の中には入れてくれなかったし、とんだ扱いを受けたわ。どういうこと?」

まるで穢れたものを見るかのような目で私を一瞥して梨花さんは納得いかない、と水城さんに抗議した。

「社長に用があるなら、外でお待ちくださいって言われたわ。外でよ? まったく、ここの店の従業員教育を疑うわ」

ふん、と鼻を鳴らして梨花さんは水城さんを睨んだ。けれど、彼はまったく歯牙にもかけず、至って冷静だった。

梨花さん、ずっとここで私たちのことを待ってたの?

きっと、文句のひとつやふたつ言いたくてたまらなかったのだろう。梨花さんの執念深さにゾッとした。

「遅れる? バックレた、の間違いだろう? それに、うちのスケジュール以外の予定を優先して契約違反をしたのはそちらだ。文句を言われる筋合いは微塵もない」

まっとうな反論をされて梨花さんはぐっと押し黙る。