偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~

「しかし、川野君は水城君と違ってまだまだ半人前だ。この先彼らがどうあろうと、川野君には男として成長してもらわないと、私も心配だ」

この期に及んでまだ心配している父を見ると、思わずくすりと笑みがこぼれた。

ほんと、心配性なんだから。

「彼なら心配ありませんよ、私が保証します。彼、有坂社長が思っているよりもずっと信頼の置ける男ですよ」

水城さんが話に割って太鼓判を押すと、父はホッとしたような顔になって頷いた。

「水城君が言うのであれば間違いないな、実際、今回のプレゼンの採用結果も君の中でもう答えは出ているのだろう?」

え? 答えは出ているって? どういうこと?

訳が分からず水城さんを見ると、彼は父に申し訳なさそうに眉尻を下げていた。

「ええ、甲乙つけ難いくらいアルコン広告社の案もよかったのですが……」

「あはは、君とは付き合いが長いんだ。言われなくとも何を考えているのかくらいわかる。川野君のプレゼンを聞いているときの君を見ていたら、そんな気がしていたよ。それに、意表を突かれるくらい、なかなかのプレゼンだったじゃないか、彼も変わったな。以前は引っ込み思案で社長らしからぬ男だったが……川野君の今後に期待するとしよう。今回は完敗だ。こんなに清々しい負け戦は初めてだ」

張り詰めていた空気が和らいでいく、両親はもうやり直しがきかないかもしれないけれど、父との関係ならまたやり直せる。その証拠に父は私に再び笑いかけた。