偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~

母は世界中を飛び回っていたけれど、家にいるときはいつもひとりだった。私が傍にいることで、少しでも寂しさが紛れるのならと、できるだけいつも一緒にいた。だから父は自分よりも母に懐いていると思って……。

お父さんも、寂しかったんだ……。

「だから今まで私を避けていたの? もう、お父さん、素直じゃないよ……お父さんこそ、頑固だよ」

父の気難しさは筋金入りだ。十年の時を経て、ようやく本当の気持ちがわかった。そして、ずっとずっと胸の中にあった氷塊が次第に溶けてなくなっていくような、そんな気がした。

「そうだな、私も大概だな……愛美、すまなかった」

父は私の前に歩み寄り、頭を下げた。

「そんな、やだ、もう頭あげてよ」

まさか、お父さんが私に謝るなんて日が来るなんて……信じられない。

「水城君と、お前が交際しているというのは本当だったんだな。父親なら、娘の幸せを願わなくてはな」

「えっ、じ、じゃあ……」

私たちのこと、認めてくれるの?と、そう口に出す前に父は私にやんわりと微笑んだ。

「私が駄目だと言っても、想い合うふたりをどうすることもできない。優香みたいにな」

父の言葉に私は目を見開いた。嬉しくて、言葉にならない。