俺は彼女の顎をクイっと持ち上げ、

「好きだよ♡兎和ちゃん♡」

……今、兎和に好きだと伝えたその『声』は紛れもなく俺の声だ。しかし、その『言葉』は俺の意思によるものでは無かった。
そして、いつもと様子の違う俺を見てきょとんとしている兎和を、俺は自分の意思とは関係なく抱きしめた。

「ずーっと僕の彼女でいてね!」

…俺はようやく現状を理解した。
出てきてしまったのだ。

『アイツ』が。

「巡?…だい…じょうぶ…?」

焦る俺を心配そうに見つめる兎和。
俺はなんとか「悪い!先行ってて」という言葉を絞り出すと、走って自宅へ引き返した。