私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~


 * * *

「眠れなかった」

 朝の光が部屋に差し込むのを見つめながら、私はベッドの上で寝返りをうった。
 アニキと鈴音さんの昨夜の光景が脳裏から離れない。

「あの二人、付き合ってたんだ」
(私が入る隙は、微塵もない)

 枕を頭から引き抜いて、ぎゅっと抱きしめた。
 これはもう、認めざるを得ない。

 私は、アニキのことを人としてではなく、異性として好きになってたんだ。
 いつの間にか……。

 ていうか、何度も落ち込みそうになったときに助けられて、あんなに優しい目で見られたら、私じゃなくたって、誰だって好きになるよ。
 アニキが、天然のタラシなのがいけないんだ!

「バカヤろー!」

 私は小さく呟いて、枕を放り投げた。
 枕が私を飛び越えて、どこかに落ちたのを背中越しに感じる。
 不意に、涙が鼻筋を伝った。

「ううっ!」

 シーツが涙で濡れていくのも気にせずに、私は泣けるだけ泣いた。
 せめて涙が枯れるまで泣きたい。だって、失恋決定なんだから。
 自覚もなかった恋が終わった。