私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~


 * * *

「あ~! ムカつく! なんなのあの女!」

 私はベッドに、バスッと沈みこむと、枕を持ち上げて悪態づいた。
 あの後、見せ付けるようにアニキに、ベッタベッタと触りまくって、アニキもアニキで、頬が緩んでるような気がしましたし?

 ああ! ムカつく! 

「……いやいや、なんで私がムカつかなくっちゃいけないのよ? 冷静に考えれば、別にムカつく必要ないじゃん?」

 アニキは私のなんでもないんだし。
 ただこっちの世界にいる間、お世話になってるだけで、別に特別な関係でもなんでもない。
 皇王子のことだって、そうだ。
 別に、嫉妬する必要なんてない。

 あんな目で見られるのは私だけだ、なんて自惚れてただけで、恥じることはあっても、嫉妬なんてね。

「……そうだよね。恥ずかしかっただけ。嫉妬なんてしてない」

(好きじゃない)

「アニキのことは、兄みたいに思ってるだけだもん」

(そうだもん)

 キスなんかされたから、舞い上がっちゃっただけだ。
 私は持ち上げた枕を顔に押し当てて、ごろんと横に転がった。

「アニキのばかやろー!」

 呟いた声は、枕によって低くくぐもって、ごにゃごにゃとした音声に変わった。