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「あ~! ムカつく! なんなのあの女!」
私はベッドに、バスッと沈みこむと、枕を持ち上げて悪態づいた。
あの後、見せ付けるようにアニキに、ベッタベッタと触りまくって、アニキもアニキで、頬が緩んでるような気がしましたし?
ああ! ムカつく!
「……いやいや、なんで私がムカつかなくっちゃいけないのよ? 冷静に考えれば、別にムカつく必要ないじゃん?」
アニキは私のなんでもないんだし。
ただこっちの世界にいる間、お世話になってるだけで、別に特別な関係でもなんでもない。
皇王子のことだって、そうだ。
別に、嫉妬する必要なんてない。
あんな目で見られるのは私だけだ、なんて自惚れてただけで、恥じることはあっても、嫉妬なんてね。
「……そうだよね。恥ずかしかっただけ。嫉妬なんてしてない」
(好きじゃない)
「アニキのことは、兄みたいに思ってるだけだもん」
(そうだもん)
キスなんかされたから、舞い上がっちゃっただけだ。
私は持ち上げた枕を顔に押し当てて、ごろんと横に転がった。
「アニキのばかやろー!」
呟いた声は、枕によって低くくぐもって、ごにゃごにゃとした音声に変わった。



