アニキを諦めよう。
 彼やみんなの話を聞いて、私は決心した。
 だって、柚さんの事を話すアニキは、本当に、優しく、暖かい眼差しだったから。

(私を通して見ていたのは、彼女だったんだな)

 これで、私は帰る道だけを模索する事ができる。前を向くことが出来る。割り切ろう。断ち切ろう。
 私は自分に言い聞かせた。

 涙がこみ上げそうになったけど、堪えた。
 私は、自室の中で、もうすっかり明るくなった空を見上げながら、大きく息を吸った。

(アニキ……この呼び方も、もうやめなきゃ)