お母さんが来て出してくれたから、わからない。


「払うから」


 そんなのいいよ――と、言おうとしたとき。


「慰謝料込みで10万」と言ったのは、えみるだった。

 となりには五十嵐先輩がいる。

 仲良く2人で登校してきたみたい。


「じゅ……10万」

 顔を引きつらせる、ヤザワくん。


「いやいや。そんなにかかってないよ、絶対」

「古都は許しても。あたしは許さないからね」


 ヤザワくんを睨む、えみる。


「またあとで」

「うん♡」


 去りゆく五十嵐先輩に満面の笑みを浮かべたあと、ふたたびヤザワくんをギロリと睨んだ。


「すごい変わり身」

「うるさい。アンタ、ほんとに悪いと思ってるなら。治療代払うのはもちろん。桝田くんにも謝りなよ」