氷の入った小袋を、まぶたにあてる。

 ひんやりして気持ちがいい。


「桝田くんとデート中。泣かされた……、とか?」

「デートでは、ない」

「2人でカラオケなら。れっきとしたデートっしょ」


 じゃあ。やっぱり。

 ……マサオミくんのも、デート?


「あたしと別れたあと。なにがあったのよ」

「本屋さんに、寄ったの。参考書欲しくて。そこで、桝田くんに会って」

「うんうん」

「言い合いしてたら。桝田くん、すごく目立ってて。マサオミくんの名前出すものだから。ひと目のない場所に、避難して」

「目立つねー。彼は。避難先がカラオケだったというわけね」


 そこで飲み物を取りに行ったとき、マサオミくんとバッタリ遭遇したこと。

 マサオミくんの隣には綺麗な女の先輩がいたこと。

 それで、頭が真っ白になったことを、えみるに伝えた。