「それより歯ブラシ用意してやって」

「オーケー。ということは、昼は外食だったんだね?」


 それがファーストフードだということは口が避けても言えない。

 こんなにフレンドリーかつ温厚そうな執事さんも怒ると怖いのだろうか。


「珍しいね。ヨシヒサが外食とは。まあ、なにより、デートなんてする年に、なったん……だね……」


 感極まって泣きそうになっている。

 涙腺ゆるいの?


「コトリ、俺シャワーしてくるけど」


 感動中のお兄さんを全スルーしてわたしに問いかける、桝田くん。


「うんっ」

「コトリも使いたければ使えばいーよ」

「わたしは、大丈夫だよ」


 移動は車だし汗もかいていないし。


「そうか。なら。適当にくつろいでろ」


 と、言われましても。

 歯磨きを終えリビングに向かうと広すぎて落ち着かない。