私は、必死で抵抗した。

声も出せないし、手も動かせないけど、足を突っ張り、座り込んで、暴れた。

けれど、それすら、男には楽しいようで、ニヤニヤと笑いながら、私を引きずっていく。



その時、ポーンと柔らかい音が鳴り、エレベーターの扉が開いた。

え!?

中には北海道にいるはずの大和さん。

「なっ!?
由里子っ!?」

一瞬、きょとんとした大和さんだったが、状況を把握した途端、逃げ出した男を追いかけた。

逃げ出すと言っても、エレベーターには大和さんが乗っていて、玄関に私が座り込んでいるので、逃げる先は最上階の部屋の中しかなく…

大和さんは、ほんの5分にも満たない時間で、リビングからバルコニーに出ようとした男を捕まえて、右手を後ろに捻り上げた。

苦痛に顔を歪める男を、彼が持ってきたガムテープで私と同じように後ろ手に縛り上げると、戻ってきて、私の拘束を解いてくれた。

「よかった。由里子。無事で。」

「やま…と…さん」

抱きしめる大和さんの腕の中で、私は嗚咽を漏らした。

大和さんが来るまでは、どんなに怖くても全然泣かなかったのに、大和さんに助けられた途端、涙が止まらなくなった。