8月、9月とあっという間に季節は巡り、10月に入ったが、何事もなく平穏で幸せな日々が過ぎていった。

そんなある日、大和さんが出張に行くことが決まった。

「日曜まで北海道なんだ。」

そう言う大和さんは、落ち込んだ顔をしている。

「お仕事なんですよね。
頑張ってきてください。」

私が声を掛けると、大和さんは少し拗ねたように言う。

「由里子さんは平気なの?」

「え?」

「俺は1週間も由里子さんに会えないなんて
耐えられないよ。」

こういう大和さんを見ると、こんな私でも愛されてるんだという実感が湧く。

「私も寂しいです。
でも、お仕事じゃ、仕方ありませんよね。
夜、お仕事が終わったら、お電話して
もらえますか?
声だけでも聞きたいです。」

私がそう言うと、

「もちろんだよ。
どうせならビデオ通話にしよう!
声だけじゃなくて、顔も見たい。」

と私の手を握る。

「はい。
待ってます。」

それを境に、夜は甘やかなものへと移ろっていく。