「うん!」
「おーい。始めるぞ!」
「「はい!」」
それから2ヶ月ほど、舞台の準備をした。
有名な映画監督なだけあって舞台もすごく期待されている。
テレビに告知のためオファーされることも増え、慣れないことを沢山した。
鬼輝は妖怪界の仕事もしなければいけないため、睡眠時間が極度に減っていった。
移動中や撮影の合間など居眠りが多くなり始める。
「大丈夫?」
「うん!何とかね」
「舞台明日だけど」
「よし!頑張るぞ!」
舞台当日、客席には多くの人が入っていた。
チケットは、発売初日から完売し数万人の人が見に来てくれた。
緊張の中、以上に着替えた鬼輝は透のことを思い出した。
数年間も同じ布団で眠って、嬉しいはずのひと時が、こんなにも悲しいことになるなんて何も考えれなかった。
自分の身勝手な判断で透を傷つけていたなんて知らなかった。
あー、泣いちゃダメ。
泣いたら、頑張れなくなる。
「キキ?どうしたの?」
「冬奈……」
少しだけ、話目もいいよね。
もう耐えきれなさそう。
「あのね。」
鬼輝は透が眠って目を覚まさないことを話した。
開演10前になるまで鬼輝の涙は止まらなかった。
冬奈は静かに背中を摩ってくれた。
「いいな。その透さん。そんなに思われてるなんて」
「良くないよ。助けてあげられないんだもん」
「そうかな?キキはさ、自分の気持ち伝えたことある?」
「……ない」
「じゃぁさ、伝えてみれば?そうすると聞こえるって言うじゃん」
「……ほんと?」
「うん。してみた方がいいと思う」
「分かった。ごめんね」
「いいえ!いつでも頼って」
「うん」
「皆さん始まりすよー!」
「「はーい」」
なんのトラブルもなく無事に2時間の舞台が終わった。
舞台後にインターネットを見てみると急上昇ワードに「鬼輝」「透」と入っていた。
「お疲れ様」
「お疲れさま。あっ!とさんのところ行かなくていいの?」
「今から行く!」
「気おつけてね!」
「はーい」
読んでおいた馬車に乗り込みお寺を目指す。
待ちきれぬ思いを胸を抑えながら。
待っててね……。