町中には多くの妖怪、妖たちが集まっていた。
戦いの話を聞いたひよじぃがみんなの活気を取り戻してくれたのだ。
小さい戦力だがみんなが集まると、すごく盛大な力が生まれる。
ほかの幹部たちも声を上げ、戦ってくれるそうだ。
その中には、戦闘着に着替えた希音の姿もある。
クロの袴に金色で塗られた富士には鬼輝の好きな蝶々を描いていた。
それに対して烏達は記録されていた量よりも数倍多い数だった。
両側の金が鳴る時、戦いが始まった。
朝の九時。
駅前でみんなが集合し、遊園地まで向かった。
「すごい楽しみ!」
「そうだね……」
「ね、心音」
「なに?」
「希音、怪しくない?」
「私も思った」
「もしかしたらだけどさ、妖怪界でなんかあったんじゃ?」
「2人ともどうしたの?」
「「なんでもない」」
電車に揺られること、30分。
着いたのは人気でチケットが取りにくい遊園地だった。
みんなの興奮は頂点になり、叫び出しそうな勢いで喜んでいる。
3人はわクラスメイトの集を抜け、3人で回ることにした。
ジェットコースターや、コーヒーカップ。
ブランコや魔法の絨毯。
「たのしー」
「ちょ、休憩しよ」
「気持ち悪い」
「そう?」
そう言いながら3人は近くのベンチに腰をかけた。
鬼輝は近くのお店でアイスを買い、2人に渡す。
「ありがと」
「いいえ!!それよりさ、雲行き怪しくない?」
「確かに。不吉」
『お前が』
「えっ?」
「誰?」
『お前が記憶を取り戻して復活しないと』
「心音、心花、誰の声?」
「分からない」
「もしかしてだけど……烏?」
「えっ!嘘でしょ」
「烏?」
『力を取り戻さないとあいつらは皆死ぬ。
俺達はお前を殺すまで終わらない』
「誰に言ってるの?ねー、心音!心花!何これ」
全てを理解した2人の顔は真っ青になっていた。
今すぐ妖怪界に行きたいが、記憶をまだ完全に取り戻していない鬼輝を連れて行っても大変なことになる。
でも、ここに置いていくのも危ない。
そう考えていると萌音から電話がかかってきた。
『もしもし、妖怪界が大変なことになってる』
「え?」
『町中血の海。私達も戦ってるけど、これ以上持つかどうか』
「分かりました。でも、キキはどうしたら?」
『連れてきて!そしたら思い出すはず』
「分かりました」
電話を切り、2人は鬼輝の手を握りあのお寺に向かう。
最大限の力を使い、瞬間移動をするが間に合いそうにない。
そう思った時、空から何かが近ずいてくる。
その正体は、小鳥だった。
翼を大きく広げ、余裕で3人は乗れる。
「まって!これに乗るの?ちょっ、きゃーーーー」
「キキ、静かに。」
「今から全部を話すから。キキはね、私たち妖怪の君主なの。」
「そしてキキには、大きな力を使えるの。だから私たちを助けて」
「待って意味がわからない。君主?何それ。力?持ってない」
そうこうしている間に、妖怪界へのゲートをくぐった。
そしてそこに広がるのは、血だらけの街中だった。
3人は言葉も出ない。
あまりの悲惨さに街中を見渡すことしか出来ない。
小鳥と離れ、2人は鬼輝の記憶を取り戻すように話しかけた。
「覚えてる?」
「この風景は……わかる」
「じゃぁ、力は?」
「わからない」
『お前が鬼輝だな……ぐは』
地面に倒れていた烏が、声を上げる。
死にかけながらも、力を使おうとしている。
「もうダメ。私達はほかの所に行くから、キキはここで待ってて。」
「でも。」
「いい?」
「分かった」
2人は着替え、遠くに走り去って行った。
残された鬼輝は、人影のないところに身を隠した。
すると何かが空を飛んでいる。
気になり顔を出してみると、目が合った。
「龍?」
急降下してきた龍は、鬼輝の前で止まり、じっとこちらを見てくる。
「あの」
『思い出したか?』
「何を」
『お前の正体だよ』
「いえ」
『はぁー。そんなもんか。まーいーや。俺はお前が気に入った。記憶は取り戻せないと嘘を言ったが、記憶を返してやるよ』
「ほんと?」
龍は鬼輝を一口で飲みのこんだ。
眩しい光に包まれて当たりが真っ白になる。
音も何も聞こえなくなり、目の前に映るのは昔のじぶん。
綺麗な着物を着て、お面をつけている。
いろんな力も使っている。
そして龍との取引もしている。
今までの記憶が一気に蘇ってくる。
『これで500年分かな』
「思い出した。龍、今何をやっておるのじゃ?」
『おお、口調も元どうりだな』
「よいから、答えるのじゃ」
『烏との争いだよ。ここ一帯の奴らはワシが殺した』
「じゃぁ、透と希音も?」
『そうだ』
一気に顔全体の血が、引く感覚がした。
走り出そうとした時何故か体が動かない。
『まて、その格好で行くのか』
「あっ。着替えないと」
一瞬にして、鬼輝の力で鮮やかな着物に着替えた。
赤色の着物に白や黄色で鮮やかに王将が入っており、髪型は簪をつけひとくくりにする。
メイクももちろんしている。
『わしの背中に乗れ』
「ありがと」