透が、納める妖怪界は限界を迎えていた。







商店街は全てたたまれ、喧嘩をする気力もない。







仕事も溜まっておりだれも人の事なんて心配できない状態だ。









「透さまー!大変でございます」








「小鳥……五月蝿い」









「あ、申し訳ありません。それより!キキさまの記憶が少し戻ったらしいですよ」








「ほんとか!俺のことは?」









「い、いえ。まだみたいです」








「そうか。王のこともだよな」








「はい。」










「透さまー!」







「今度は誰だよ」








「私の弟、似鳥でございます」







バタバタとは言ってきたのは小鳥を少し小さくした可愛い男の子だった。









「どうした?」







「これ!黒い羽」






「黒い羽?烏か……」







「町中に落ちてるんですよ!」







「なに?なんで烏達が……。もしかして奪う気か?」







その場の空気は凍りつき沈黙が流れる。






あいつらならしないとは言いきれない。






町中の妖怪たちもあきらめ、城の使用人達は数が減り戦えるものはいない。









「どうしたら……俺一人だとアイツらには勝てない」







「残念ながら否定できません」







「それなら!あの龍様にお願いしてみては?」







「龍?あの野郎にか?」








「はい!悪い奴ではありません」








「俺には十分悪いやつだけどな。まー、試してみるか」










龍が眠っているのは霧が漂う山の頂上の城。






そこは龍のために先代の王が作ったと言われている。






そこにたどり着くにはまる2日かかる。







そんな時間、かける暇もないため馬車を使って数時間で向かうことにした。







行く道は足場が悪く普通の妖怪だったら誰も行かないだろう。






また、天狗の村があるため誰も怖がって折り返してしまう。






決して天狗達は悪気があってやってる訳では無いのに。






どうこう考えるうちに龍の城が見てえきた。








「大きいですね」





「そうだな。俺も初めて見る」






「うぇ!初めてなんですか?」







「当たり前だろ!俺、王じゃねーし」







「そ、そうですけど」







「不安なんだな」





「い、いえ!決して透さまだからというわけじゃ」





「隠すの下手」








「お二人とも!!もんが開きましたよ」









城の中は思っていたより全てのものが大きい訳ではなく、普通のものと変わらない大きさの物ばかりが置かれていた。








「龍なのにこんな大きさでいいのか?」








「さ、さあどうでしょうか?」








『どちら様でいらっしゃいますか?』







「あっ、我らは王の使いのものです。こちらは透さま、我らの君主でございます」






『そうですか。少々お待ちください。』







そこで待たされること10分、先程の使用人がやってきた。








3人は人機は目立つ大きな部屋に連れてこられた。







『我ら君主がお待ちです。ドアを開けて右に進んで頂ければお会いすることができます』







「ありがとうございます!」







「さっ、行くぞ」






ドアを開くと長い先の見えない廊下が続いていた。






どのくらい歩いたのだろう。






騙されたのかもしれないと言うほど長い廊下を歩くと黄金の色をしたドアが待っていた。








「失礼します」






『おう、待っておったぞ』







「??」








『何ぼーっとしておる。はよ座れ』







「どちら様?」






『な、お主らが会いに来たのじゃろう。わしが龍だ。今は人の格好だがな』






「そうなんですか。では単刀直入に言いますが力を貸してください」








龍の顔は、にこやかだった顔からこわばった顔に変わった。






手で顎を触り、悩むようにこちらをむく。








『記憶を取り戻したのか?』






「はい。少しだけ」







『俺のことは?』







「まだのようです」








『では何故たすけて欲しいのだ』








今までのことを全て話した。







城のことも、鬼輝のことも烏達の事も。








正直、辛かった。







自分が何一つできていないことに……。











『そうか。分かった、力を貸してやろう』







「本当ですか?ありがとうございます」







『ただ』







「ただ?」









『お前の何か一つをくれ。あの王もそうだった、記憶を私にくれたんだよ』







「記憶を?何故」







『お前らを守るためだよ』








何故か目から大量の目がでてきた。





拭いても拭いても止まらない、何故だろう。






俺が助けてあげれば、鬼輝は俺の事を忘れはしなかった。







辛い思いをさせなかった。






こんなことにはならなかった。








『お前……そんなに思い詰めるな。あいつは仕事を果たしただけ。お前のせいじゃない』







「でも、婚約者の俺が見守っとけばこんなことにはならなかった」







『……そう思うなはお前の寿命をくれ。』








「「それはいけません!」」






小鳥と似鳥は、必死に止めに入った。






今の状態だと透は、理性を忘れてしまっている。







でもももう、遅い。









「分かった」








『契約成立だな。戦いが終わったあとお前の寿命を頂く』