東輝と小唄の大声で僕たちに気づいたらしい兄さんが、ぱっと顔を明るくさせて大きく手を振った。
「想―!」
僕が兄さんの方へ行くと、いつものごとく抱き付いて来ようとしたから拳を突き出してみた。
「想……それはどういう意味?」
兄さんは、抱き付く格好の準備なのか、両手を広げていて、僕が拳を突き出したことでその手は行き場をなくしている。
「美結が嫌がることやったら兄さんでも殴るつったろ」
僕が宣言すると、兄さんはまた涙を浮かべた。
「尚~っ、想が僕のことぶん殴るとか言うんだよ? せっかく想が戻って来たと思ったのに~」
とばっちりが尚に行ってしまった。
尚はため息苦笑まじりで応じる。



