けれど、分かっている。



この想いを、自分の中に留めておかなければいけない事も。



誰にも気付かれない様に、琥珀に嫌われない様にしないといけない事も。



「はぁ………、」



自分の想いに嘘をつく生活なんて、ストレスしか溜まらなくて。



思わず、溜め息が零れる。




そんな時。



「俺、ちょっと出掛けるわ」



琥珀が立ち上がった。



「何処まで行くの?」



「ん、すぐそこのコンビニ。そんで、“パパの手料理”寄って仁(じん)達と話してから帰るわ」



ワッフルを口にくわえながらそう説明する琥珀の後ろ姿は、いつもの様に大きくて。



本当は着いて行きたい気持ちをぐっと堪え、



「寒いから、コート!…着たら?」



リビングのドアを半分開けた彼に向かって、そう呼び掛けた。



「…あぁ、そうするわ」



案の定、琥珀も拒否はしなくて。



彼と少しでも長く居られることに感謝しながら、俺はコートをハンガーから取って彼の元へ向かった。





「……いつも悪ぃな、俺のせいで」



右手が上手く動かない琥珀は、コートを着るのに自分1人では時間が掛かってしまう。



だから、いつもコートを着させる俺に向かって謝ってくるけれど。