「……そうかな?俺は好きだよ」



(お店の名前も、君の事も)



(好き、だよ……)



無理矢理口角を上げて、俺はそう応えた。





花柄のお皿に、自分も含めて5つのワッフルを乗せてテーブルに戻ると、



「頂きます!」



「美味しい!」



「ほっぺた落ちる!落ちた!」



リビングが、瞬く間に騒がしくなって。



「うるせぇな、お前ら……」



そうやって愚痴を呟く琥珀の顔も、少し緩んでいる。



あんなに愚痴愚痴言っていても実は家族の事が好きって事くらい、俺にも分かる。



「琥珀も食べなよ」



俺は、彼のポケットに突っ込んまれた力の無い右手に目をやりながら、彼の左手にワッフルを握らせた。



「お、ありがとな」



一瞬俺を見て笑う彼の顔に、不覚にも心が踊った。



(やっべ……、今のは殺しに来てる)



琥珀に見られただけで、笑顔を向けられただけで、彼の些細な行動で、一瞬で顔が赤くなるのが分かる。




こんなに苦しい思いは、もうしたくないのに。



叶わない恋なんて、したくないのに。



それでも俺は、同性である彼の事が……琥珀の事が、好きなのだ。