手を引かれるまま、歩いて、曲がって、たどり着いた先。
ガチャ、とオートロックの鍵が開く音。
中に入ると、好きな匂いにつつまれる。
中島くんの匂い、
たしか、ムスクジャスミンって言っていた……。
なんて、思い出すヒマもなく。
「っ、ひゃあ……」
首筋に指先が当てられて、ラインをゆっくりとなぞる。
まるで猫をあやすみたいに。
「他に、言いたいことあったんじゃないの?」
「……え?」
耳元に唇を寄せられてクラクラした。
「はのんちゃんが素直になるには、俺、どうしたらいいのかな」
低くてどこか色っぽい声が聞こえたかと思えば、目の前がふっと暗くなって
唇が塞がれた。
ちゅ、とわざとらしいリップ音を立てて離れていく。
短いキス。
見上げると、私の唇に人さし指を当ててくるから、おあずけをくらっているような、もどかしい気持ちになった。



